melancholy youth

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Hodera / First Things First

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Take This to Heart Recordsというレーベルをご存知だろうか
マサチューセッツはウエストフィールドという街に拠点を構えるレーベルだ
2012年に設立以来, ポップパンクやメロディックパンクを中心に様々なバンドをコンスタンスにリリースしている, チェックすべきレーベルの1つであろう
現在ではNo Sleepに移籍したPineが以前にリリースを行い, Super American, Save Face, Fossil Youthといった要注目株なバンドも所属している
今年に入ってからもDead Leavesやfuture teensといった上質なインディロックバンドのリリースも行っている...

そんなTake This to Heart Recordsとこのバンドも契約を交わした
それがHoderaだ

ニュージャージー州を拠点に置く, フロントマンのMatthew Smithを中心とした4ピースバンドだ
昨年Audiotreeでのセッションを行い, ついに今年2年振りとなるアルバムをドロップした


芳醇でゆったりとした雰囲気と, 温かみを封じ込めた音色
何処までも広がっているような大地を思わせるスケールさを兼ね備えつつ, 寄り添ってくれるような優しさも感じさせる楽曲
そしてそこに乗るMatthewの力強さと優しさを合わせた歌声はまるでこちらに語りかけてくるようだ


冒頭の"Out of Sync"は先のAudiotreeセッションでも演奏されていた楽曲 静かに, ゆっくりとアルバムの幕開けを演じる
段々とコーラスとバンドサウンドが増えていく様はまるでオーケストラのようで, 徐々に楽曲に色味を増していく
そして火花が散るように一気に盛り上がった瞬間, 思わずハッとしてしまった 何も言葉に出来なかった
冷静に聴くと印象的なギターのリフや, 地を一歩一歩踏みしめるように叩かれるドラムがとても美しく感じる
最後には祭りの後のような, 何ともいえない寂しさが全身を襲ってくる 思わず溜息が漏れてしまった
冒頭にしてこのアルバムのピークに達してしまったかのような, 本当に素晴らしい1曲だ


youtu.be

今作はカントリーやフォーク, ブルースといったルーツミュージック色をより濃く表してきた
もう少し今までの彼らはここ数年のシーンとリンクするようなギターのフレーズや絡み, アグレッシブさもあったように思うが, 今作はもっと彼らの中にある音楽性を強く出したアルバムだと思う
アメリカ人の血というか土壌というのか, ダイナミックさや何処か土臭い雰囲気を感じさせ, まだ2枚目のフルレングスにしてベテランの風格すら既に出てきてるように思わせられる (この場合落ち着きを持ったと表現した方が良いかもしれない)
とはいえ, タッピングやちょっとしたアプローチにこれまでの彼らを踏襲した要素も残っている
中和したとでも言うべきか


このアルバムでは, 人の生活や営み, 恋愛, 生死などを歌詞に綴っている
誰かに手紙を送るように, はたまた思い出を書き残す日記のように, 私的で詩的な歌詞になっている
自分の居場所は何処にあるのか, 自分が何者なのか...という自問自答にも思える言葉や, もっと良い自分になりたいという歌詞もあり, 何処か迷いや苦悩も感じさせる
Matthew自身の実体験や思いから来ている部分も多いのだろう 歌詞は生々しく場面を想起させる


アルバムはポエトリーディングのサンプリングを使ったインストゥルメンタル曲でゆったりと終幕へ向かう
跳ねたリズムと繰り返されるギターのフレーズが心地良い

このアルバムはシンプルで, そして普遍的な良いアルバムだ
彼らはとても難しいことをするわけでもなく, でも楽曲に真摯に取り組んでいる
"良い"と思わせるというのは実は中々に難しいことだが, 彼らのアルバムは誰もが聴いても(少なくとも)良いと思えるものだと僕は思っている

何処までも真っすぐに, 僕らに優しく添っていてくれる1枚