melancholy youth

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what is argentina / chile emo?



bandcampのタグ漁りを行なっていて、emocoreのタグを何の気無しに辿っていたところ、少し前にXのTL上で挙げられていた"Baltimore in Love"のEPを確認。


個人的にそのポストを確認する前からbandcampに音源があることを認識はしていたのですが、その音源をリリースしているレーベルについては深く掘り下げるところまではいってなかったな、と思い色々聴いてみたところ気になるバンドや作品、またその周辺の他のレーベル/バンド(及びチリ等他国のバンド)についても知ることとなり、それについてポストも行なっていたのですが、せっかくならと簡単に纏めてみようと思い至ったのが当記事となります。


リリースを行なっているのがアルゼンチンのブエノスアイレスのレーベルInerme Discos。2012年に設立されたレーベルとなりパンクやハードコアをルーツとした現行のバンド/アーティストのリリースを行なっていますが、Baltimore in Loveを含む嘗てのバンドのディスコグラフィや再発等も行なっています。


1994年から活動するMofa。00年代初頭まで活動の後暫く活動が止まりますが2010年代から活動を緩やかに再開。2019年にはMineralの南米ツアーのサポートも行っています。サブスクやbandcampにて公開されていないものもありますが、現在までアルバムを5枚リリースしているとのこと (1枚は再録及び新曲が入ったもの)。

初期はエモコア寄りのサウンドを展開していましたが、活動再開後は段々と柔らかく変化しエモロック~インディロック寄りのものにシフト。



2001年から活動するasamblea internacional del fuego。こちらはチリのバンド。哀愁漂う激情/スクリーモサウンドを基調としています。

最新作ではモダンさが増し、ボーカルも叫びよりスポークンワードやクリーントーンの比量が増しています。ヨーロッパ系激情の匂いを漂わせつつ、時折akutagawaのような展開を見せる部分もあり日本のバンドにも通ずる感覚もあります。



2008年から活動するカルドバのArboles en Llamas。リリースを経るごとにメロディアスさが減り激情に接近するポストハードコアなサウンドを展開。
上記のアルバムでは1曲目に日本語の詩の朗読がサンプリングされている (何の詩だったかは定かではないのですが)。
bandcampを知った10数年前、mixi内のパブリックに公開されていたとあるページにてこのバンドのことを紹介されていたのを思い出して少し懐かしくなりました。


南米諸国は母国語がスペイン語である国が多いという点から、スペインやヨーロッパのバンドのテイストも感じられる気がします。asamblea internacional del fuegoは活動時期が近いFine before you cameにも通ずるサウンドに思えます。



EPのみのリリースだと勝手に思っていたBatimore in Loveですがどうやらアルバムもリリースしていたようで、別のレーベルのbandcampにアップされていました。よくよく見たら前述のEPのトラックリストの下にアルバムをリリースしたとの記載が載っていたのですが...。

リリースを行うSniffing Recording Industriesは1996年設立のレーベル。エモコアやメロディックパンク等現在までリリースを続けています。中にはスイスのBlue Water BoyのCD版のリリース等も手掛ける等当時から他国のバンドとの繋がりやコミュニティが形成されていたようです。



1997年から2000年まで活動したFlores del sol。切なく歌い上げ時に叫び上げる女声ボーカルが映えるエモコアサウンド。Beta Minus Mechanicライクなスタイルでしょうか。

Flores del solは単独作の前にスプリットをリリースしていて、こちらではよりメタリック/ハードなリフが繰り広げられるのですが、そのスプリット相手であるWhisperはBaltimore in Loveのメンバーが過去に在籍していたバンド。ポストハードコア/エモコアサウンドを提示していく中、時折感じる繊細さが後続のバンドにも受け継がれているのが分かります。またディスコグラフィSniffing Recording Industriesと前述のInerme Discosから連名でリリースされています。


不穏さから時折明瞭になるメロディを行き来するエモコアサウンドのCatarsis。少しのチープさはありながら独特なノリがクセになります。

7inchもリリースされていてこちらはよりショート且つファスト目な楽曲を収録。


1987年から2005年頃まで活動していたRestos Fósiles。メロディックパンクを主軸に置いたサウンドでJ Churchともスプリットをリリース。上記のCatarsisに在籍していたメンバーも居るそう。


そのRestos Fósilesについて検索をかけたところ、veganrecordsなるその名からして厳格過ぎるレーベルがヒット。こちらは2005年に設立されたレーベルで、やはりハードコアやメタルコアのリリースを中心に行なっている模様。とはいえその中にもFuturo Vega* Popのようなインディ/ギターポップバンドや、Sudarshanaのようなメロディックパンク、Vientosのようなメロディックハードコア/ポップパンクのリリースも手掛けていて、ハードコアシーンに属するメンバーによるバンドのリリースを行なっている点はTriple-B等ともリンクするのかと。

にしても仏像をモチーフにしたジャケが散見されたのですがShelterの影響が強いんでしょうか...。


数珠繋ぎ的に再度Futuro Vega* Popを検索したらCaptain Hooperなるペルーのギターポップバンドを発見。ポップで鮮やかなサウンドで時にパンキッシュな楽曲もあり心地良いです。


Sudarshanaを検索したところxdeterminacionxrecordsというこれまた厳格なレーベルがヒット。Sudarshanaのカセットをリリースしていた模様。そんな中でジャケの雰囲気で気になったこのBeautiful Sundays。こちらもギターポップライクなサウンドなのですが、メロディックパンク/ハードコアの空気を織り混ぜた楽曲は時にアグレッシブ、時にゆったりと流れるように聴こえ塩梅の良いものとなっています。彼らはアルゼンチンだけではなくフランスのレーベルやロサンゼルスのGet Better Recordsからもリリースを行なっています。

また、Unbrokenライクなジャケのコンピを発見。こちらにBeautiful Sundaysも参加しており、他にも前述のMofaやVientos等様々なタイプのバンドが収録されているのでこちらも参考になりそうです。



Mofaがサブスクで公開されている、というのでそこから辿ってみようと関連のバンドやアーティストを幾つかチェックしてみたところ、より様々なタイプのバンドが芋づる的に引っかかってきました。


ブエノスアイレスのAnimo。ジャパンツアーも行なっているBoom Boom Kidのメンバーが運営するUgly Recordsからリリース。カラッとしたメロディックパンクサウンドに、時にポップに時に湿っぽくなるメロディとアレンジが仕組まれほんのりとキュッとなる楽曲。


2003年からの数年間 (およそ2008年頃まで)活動していたブエノスアイレスのバンドLos Años Mueren。EP1枚のみを残し活動を止めていますが、他にも楽曲を残していた様で後に編集盤もリリースされていた模様。

ラストライブの映像。雰囲気もいなたくてただただ最高。活動時期もリバイバル期に片足入るかどうかぐらいという絶妙なタイミングで、とても好きなタイプのエモを感じるバンドです。

メンバーは後にLas Armasというアートロックバンドを始めたり、Mis Amigos Muertosというラテンフォークなユニットを始めます。


Mis Amigos MuertosとスプリットをリリースしているAgosto floresという方も聴いていて心地の良い楽曲を歌っています。このスプリット以外にはリリースされていないようですが別のプロジェクトもやられてるんでしょうか。


2009~2011年のたった2年間のみ活動していたAlerces。繊細なメロディと時にドライブするギターは正にemoなサウンド。MineralやEmpire! Empire!のような純粋な感情表現を行うような楽曲にグッと来ざるを得ません。2022年には曲順とアートワークを刷新したリマスター版も公開されています。



同じくSpotifyのサジェストで見つけたこのバンドもブエノスアイレス出身のバンド。かなりendzweckっぽいハードコアサウンドで初っ端少し笑ってしまったのですがカッコ良くて上がる感じの楽曲。

よりモダンにメロディアスに仕上がったラストアルバム。今で言うOne Step Closerのようなアプローチでソリッドに格好良いです。


ニュースクールハードコアスタイルのCalma。最初にくぐもったメロディのフレーズが聞こえてきてどうなっていくのかと思えばタフなサウンドに移り変わりヘヴィな楽曲へ。時折不穏なフレーズも飛び出し一層のサウンドを演出しています。


2013年結成のConfessional。ジャケの雰囲気からして良さそうな雰囲気が漂っていますがこちらもニュースクール系のハードコア。アコギのアルペジオが乗っていたり、ヘヴィ寄りななサウンドではあれどそのフレーズのエモーショナルさが堪りません。


2003年から2006年まで活動したチリはタルカワノのSubir En Busca Del Aire。メロディアスで刹那的なアプローチの楽曲に悲哀な叫びが乗る激情サウンド。アグレッシブな爆発というよりも丁寧に紡がれる楽曲。2013年には一時的に再結成をしライブを行なっていたとのこと。



Subir En Busca Del Aireからの流れで知ったチリはサンティアゴのLeidan。2003年リリースの唯一のEP。ダミ声寄りな男声の叫びとクリーンに歌い上げる女声ボーカルの対比、時にキャッチーに聴こえるメロディが一気に沸騰してノイジーに響き渡るサウンド。1曲目後半の音出せてないのにドラムだけ疾走しちゃう感じとかも愛おしい程。ラストのアコースティックバージョン(と言いながら多分エレキでの弾き語りっぽいが)はドローンのような余韻を残しながら終わる感じでこれもまた良いです。


同じくサンティアゴのEimy。00年代エモロック直系の少しキャッチーで繊細なメロディと、メジャーな00'sスクリーモバンドにも通ずるような歌い上げるボーカリゼーションが響く楽曲は、少しの懐かしさを感じさせられます。"Buscando el Cielo"のサビは何処と無くA Thousand Milesを彷彿とさせられますが...笑


エドのantes de convertirme en silencio。タッピングギターであったり紹介する中では1番リバイバルサウンドに接近するバンドかなと。とはいえそのカラッとした独特な楽曲はshonen batやulises limaのようなスパニッシュパンクの装いにも感じ、ルーツが近いと同様のサウンドが生まれるのかなと感じました。


Leidanと同じレーベルからリリースを行うNaves。こちらは10年代中頃から隆盛を誇ったノイジーで下向き系のオルタナサウンド。初期のSunday Drive Recordsのリリース等ともリンクするような楽曲で別の懐かしい感覚に陥りました。


2003~2007年まで活動していたturpentine。ポストロック/マスロックを基調としたサウンドで、どの作品も美麗な部分から独特なメロディへ変化する楽曲を特徴としています。最終作はミニマルな作風に変わり切れ目はあれど全曲が繋がった構成となっています。



他にも紹介し切れない程沢山のバンドが活動を行なっています。これを機に南米のインディロックディグのお供にしていただければ幸いです。


最後に、検索した中で南米のエモバンド等について紹介されているサイトを見つけたので載せておきます。特にel basurero del emoはバンドの概要やその特徴等を丁寧にレビューしているので翻訳にかけて読むのが吉です。

el basurero del emo
ਂ ਂ ਂ árboles ਂ ਂ ਂ

また参考にしたのがLast.fm。biographyは日本語対応もしていますが、言語によってそれぞれ編集を加えないといけないようで日本語や英語のページでは記載が無いものがほとんどなのですが、その際サイトの言語設定をEspañol、つまりスペイン語に変換すると表記が現れてきます。全てではないのですがそちらを参考に読み進めるのも吉です。サブスクのサジェスト同様に関連バンドを調べていくのも良いでしょう。