melancholy youth

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Climb The Mind - 蕾

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Climb The Mind約3年半振りとなるアルバムがドロップ 正直このような文章に駄文をまとめてもしょうがないんじゃ無いかと思ったんだけれど, 聴いて知り合いの人と少し気持ちを共有した所でやはり書いておこうかと今に至るわけです


今作の蕾はほぞから前作チャンネル3までの期間の約半分というスパンでリリース このことを考えると比較的早いリリースに感じる そしてこの間にほぞのアナログ盤, stiffslackのクラウドファンディング限定で"世界が一斉に笑いを堪えたEP"の7inch(元々は100枚限定のCD-R盤)での再発が行われて, 新曲とアーカイブにも余念が無かった そんな中でアルバムもリリースという今まで以上にこの数年は多作な時期ではないんであろうかと とはいえ3年半である 前作がリアルタイムだった僕は新作を首を長くして待っていた
そしてもう1つ これまで共演は数あれど, 他者と交わることは無かった(と思う stiffslackからのリリース以降の彼らしか知らないのでそこは勘弁を)彼らがDischarming man, The Firewood Projectとそれぞれスプリットをリリース そして今作に関しては"無実の果実"の歌詞を同じく愛知出身のバンド明日、照らすのボーカル村上友哉氏からの提供と新しいアプローチを展開している これまで3人の中で完結していたものを他者に委ねたり共に作り上げていくというのが何となく不思議な感覚があった

肝心の内容だけれど, 単音のベースフレーズ, 柔らかく爪弾くギターから前作から顕著になったファズが効くノイズ塗れの音, ドシッドシッと唸るドラム, そして小説や文としてあまりにも完成され過ぎた山内氏の歌詞と, これまでのClimb The Mindの要素を十二分に感じられる 勿論全てがこれまでの焼き回しでは無く, 新機軸になるのかと薄っすら思われた, 前作の"耀け自販機"やFirewoodとのスプリット収録の"Peach"に垣間見れたメロコアっぽいビートは鳴りを潜め(これは前作期から加入したドラマー北野氏の影響だったのか?), とはいえ力強く叩くドラムが全体で響き渡る 初期に見られた性急かつ細やかで激しいドラミングとはまた別のバランスで担っている "ヒューマンビーン"~"避雷針"の2曲でボーカルの節回しとギターのフレーズが同じラインを進んでいる部分があるのもこれまでに見られなかった変化 "避雷針"に関してはその名の通り鳴り止まない雷とその後の静けさを表すかのような静動の対比が映る

これまでは敢えて難解にして捉えづらくも, 物語の1つを作り上げるかのような歌詞だったけれど, 今作の場合直接的な表現が増えているように思う 曲を跨いで同じ言葉を使用したり, 以前からブックレット上では小説のような字の置き方のデザインになっていたけど, 曲から曲への繋がりがより1つのストーリーの様に見えてくる 感じさせるのは別れやそれに連なる諦めのような寂しさ, そして一抹の希望と出会い...上記の村上氏が山内氏に歌詞のテーマとして頼まれたのも"別れ"なんだそうだ
"ヒューマンビーン"...英語表記だとHuman Beingで, "(人ならざるものから見た)人間, 人"のことを表す言葉ではあるのだけれど, "種"という歌詞を捩ってタイトルをカタカナ表記にするという言葉遊びや, 種が育つ様と人の成長をかけたダブルミーニングの歌詞からも伝わる成長や時間の流れというのももう一つのテーマだと思う そして"アーチをくぐれば"は卒業式のことだろうか, 出会いがあれば当然別れもいつか訪れ, それは好きな相手であろうと憎らしい相手であろうと平等で起こること, そういう教えみたいなものなんだろうかと
別れの側面ばかりではなくて, 出会いの部分も色濃く表現している "ペーパームーン"は些細なことでも喜びに感じられるかの様な小さな幸せについての曲 Discharming manとのスプリットにも収録している"つよがり"は再録されていてさらに美しく, そしてラストに向けて段々と汚れていく 最初は誕生日の歌だと思っていたんだけれど, これは結婚式の歌でもあるのかななんて歌が進むうちに想起したりした
これまでも生活や人のことを歌にしていたけれど, 今回はより温度が近くで感じられるような気がする


良くも悪くもほぞで全てが変わったような気がしている 彼らに対する評価や以降の期待感みたいなものが膨らんでいた様に思う 僕もそんなアフターほぞの状況で知った1人だ その後6年半の月日が流れチャンネル3で新しいメンバーと新たなノイズが生まれ, そして今回のアルバムは全体を通してこれまでの総決算の様にも感じてしまう
最初に上記の"歩み"のセッション映像が公開された時, 歌詞やその姿にもしかして解散してしまうんじゃないか...?なんて勝手に想像してしまったんだけれど(よくベスト盤や最後の音源みたいなものに収録される楽曲がこれまでの歴史や振り返りのことを歌うものが多く見受けられるし), 彼らにそんなことは無いと願いたい

これまででも十分に花開かせている様に思うのだけれど, このアルバムでさえまだ何度目かの大輪の花になる準備段階なのだろうか そう考えると今後どうなってしまうのか恐ろしくて堪らない 勿論楽しみな意味でだ 成長は留まることを知らず, また新たな実をつけて...