melancholy youth

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The World is a Beautiful Place & I am No Longer Afraid to Die / Always Foreign

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エモリバイバルという言葉が登場して一体何年経ったんだろうか
80年代後半から登場した音楽においてのエモというジャンル, 現在においてまで様々な意味合いを持つ単語として活用されてきた
昨年新語として"エモい"なる単語が紹介され, 端的にエモい! エモい!と皆口走るようになった
最早エモという言葉を聴くだけで嫌悪感を覚えてしまうような人まで出てきてるのではないだろうか...

2005年頃から新たに出てくるようになったバンド達, そしてそれをリリースするレーベル, それ一帯を"エモリバイバル"といつの間にか呼ぶようになった
Algernon Cadwallader, Snowing, Empire! Empire!, Into It. Over It., Tiny Moving Parts...ジャンルの中でも多種多様なサウンド, メロディ, ボーカルスタイルが出てきた それぞれ向いてる向きは違えど, エモというジャンルを好きで愛していることに変わりはないであろう

この動きに合わせるように, その他のジャンルも隆盛を誇ってきた
シューゲイザー, グランジ, オルタナティブ, ポストコア, スロウコア等々のサウンドを織り交ぜ, そして新たなサウンドへと昇華していった
現在においてもそれは進行していて, またも形を変えつつある 全てインディロックの一部に当てはまるような程にまで


そんなエモリバイバルというこのシーンの中でも異様なバンドであり, そしてこれまでずっとリスペクトされ続けてきたバンドが居る
今回取り上げるThe World is a Beautiful Place & I am No Longer Afraid to Dieがそれだ
"世界は美しい, もはや死ぬことを恐れていない"という何とも言えぬ長尺のバンド名 (最初はEmpire! Empire!等と並んで覚えることすら出来てなかったがいつの間にかスッと打ち込めている...), 7~9人という流動的なメンバー数, 独自のサウンドメイキングと小説や物語のように展開していく楽曲は最初から注目の的だった

2009年に活動を開始後, 自身のレーベルBroken World Media (残念ながらレーベルは運営を終了したとのこと)やTopshelfでのリリースを重ね, 2015年に老舗パンクレーベルEpitaphと契約を結び2ndアルバムをリリース
既にこの時点のサウンドでジャンルを軽々と飛び越えていったように感じるし, 実際そういう評価が多かったと思う

そして, 今回のアルバム"Always Foreign"だ
丁度2年振りとなる3枚目のアルバム 全11曲42分26秒と曲数, 収録時間だけを切り取ると前作よりコンパクトなアルバムになっている


前作の壮大でCursiveばりの爆発力を持ったかのような展開がある楽曲に比べれば, 何処か落ち着きと安定感を持ったアルバムだと思う
勿論彼らの良さであるバンドオーケストラ感は薄れずに残っているし, 以前よりもアグレッシブさを増した部分も見受けられる
しかし今回は今まで以上に社会問題への風刺や皮肉が歌詞に表れ, サウンドもより重さを感じさせるようになった
アルバム名である"Always Foreign"はアメリカへの移民や在住する外国人のことを表していて, 象徴的なアメリカの問題を提示している (差別や移民の受け入れの拒否等)

バンドは昨年あたりからよりこのような社会的/政治的問題と対峙してきた 普段から政権への皮肉や批判をTwitterで呟くようになっていたし(これは以前からか?), 昨年の11月に楽曲"Body Without Organs"を発表し, bandcampでの売上をACLU (アメリカ自由人権協会)への寄付へと充てるようにした
今回のアルバムはそのような活動の集大成とも取れるアルバムなのかもしれない だからこそこのように重く, そして何処かこれまでより落ち着いたように感じたのだろう


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"Marine Tigers"
非常にネガティブな楽曲である これまでの彼らの楽曲の中でもここまで暗いものがあっただろうか...
同時にこの楽曲がこのアルバムの核であることも間違いないだろう 歌詞はこの現状にうんざりし, 呆れてしまっている様子を描いている
楽曲の後半, ホーンセクションとバンドサウンドの絡みはとてつもない醜い感情が爆発しているかのようで, 聴いていてとてつもなく揺さぶられるし吐き気がする程である

PVでは3本腕の男に対する周囲の良くない反応とそれを受け続けた男の苦悩を表したものだが, これは差別されている人達へのメタファーなんだろう
冒頭から"E N D"と書かれた標識が出てくる ゴミの山に突っぱねて寝ている男に構わずゴミを投げつける男...
後半の誰にも何も言えずただ部屋に自暴自棄になっている様子は観ていてとても悲しい


ここまで読み進めて, このアルバムが非常にネガティブなもののように感じてしまうかもしれないが, 確かにネガティブな側面が大きいように感じるが, ただ単に暗いだけでなく, サウンド面でも変化があった
メンバーが変化し7人になったものの, アルバムではホーンセクションを増やし楽曲をより鮮やかに彩った
前々から感じさせていたルーツミュージックのようなアプローチも増え, より大胆に広がりを見せるようになった
少しずつ盛り上がりをみせてくる楽曲はワクワクしてしまうし, 思わず胸が高鳴る そして爆発した時のあの何ともいえない高揚感...
エモリバイバルと呼ばれていた彼らとはもはや違うが, 彼らのエモーショナルは心に深く突き刺さり僕らを興奮させてくれる...

彼らの楽曲の中でもだいぶ明るいメロディとアップテンポな"The Future"
ポップパンクの様相すら感じさせるような1曲で, 何となくblink-182の雰囲気を纏ってるかのよう... (そういえばblink-182の"Built This Pool"のカバーをしていたり, "Built This Pool"についてTwitterで他のバンドと一緒にジョークをよく言っていたけれど, 何だかんだ言ってもやはり影響を受けていたのであろう)

この楽曲で彼らはこう歌う
"未来は何度も何度もここに来たよ 今は確かに酷いものだけど, 今は全てに過去になるんだ"


現状を嘆くだけではなく, 未来を見据えて歌う彼ら
彼らにとって今回のアルバムはとても大きな一歩だと思うし, もっと突き進んでいくのだろう
すごいアルバムをまたもや作ってしまったよ...

この現在の状況にもっと蹴りを入れてくれ (Kick it!)


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